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AI活用の5段階成熟度モデル

AI活用の成熟度を5段階のモデルで説明します。この成熟度モデルを理解することで、現在の自社の状況を把握し、次のステップに進むための道筋が見えてきます。

成熟度モデルの目的

AI活用の成熟度モデルの主な目的は以下の通りです:

  1. 現状の客観的把握: 自社の現在のAI活用レベルを客観的に評価するための枠組みを提供します。

  2. 発展の方向性の明確化: 次のレベルに進むために必要な要素や取り組みを明確にします。

  3. 目標設定の基準: 組織としてのAI活用の目標設定と達成度評価の基準となります。

  4. 共通言語の提供: 組織内でAI活用について議論する際の共通理解と言語を提供します。

5段階成熟度モデルの概要

レベル1:認識段階

概要: AI技術の可能性を理解する初期段階です。

特徴:

  • 基本的なデジタル化が不十分な状態が多いです
  • 単発的・実験的なAI活用にとどまっています
  • 一部の興味を持った社員が個人的に試している程度の段階です

わかりやすい例: 営業部の田中さんが個人的にChatGPTを使って業務効率化を試みていますが、組織的な認識や取り組みはなく、成果も共有されていません。

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レベル2:実験段階

概要: 基本的なAIツールを試験的に活用する段階です。

特徴:

  • 限定的な業務で効果検証が始まっています
  • 小規模なスタディグループや推進担当が存在し始めます
  • 組織的に認識されつつあるが、まだ本格的な展開には至っていません

わかりやすい例: 営業部で正式に「AI活用検討チーム」が発足し、提案書作成や営業メール作成など特定の業務でAIを活用する試みが始まりました。毎月の定例会で成果や課題を共有しています。

レベル2の詳細を見る

レベル3:採用段階

概要: 特定業務に正式導入する段階です。

特徴:

  • 効果測定と改善サイクルが確立されつつあります
  • 組織的な取り組みが始まっています
  • 事業計画や予算にAI活用が組み込まれ始めます

わかりやすい例: 社内公式の「生成AI活用ガイドライン」が策定され、営業部と企画部では業務プロセスに正式にAIが組み込まれました。ライセンス費用が予算化され、AI活用研修も定期的に実施されています。

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レベル4:統合段階

概要: 複数の業務・システムにAIを統合する段階です。

特徴:

  • 組織全体での活用が進んでいます
  • 活用ノウハウが体系化されています
  • AI活用が組織の競争力の一部として認識されています

わかりやすい例: 社内の主要業務システムと生成AIが連携し、日常的な意思決定や業務遂行にAIの支援が当たり前になっています。各部門にAI活用の専門家がおり、部門間でのノウハウ共有も活発に行われています。

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レベル5:最適化段階

概要: AIを活用した業務の継続的改善を行う段階です。

特徴:

  • 戦略的なAI活用が組織文化として定着しています
  • 新たな価値創造・イノベーションの源泉になっています
  • 業界内でのAI活用先進企業として認知されています

わかりやすい例: AIの活用が企業文化に完全に溶け込み、新たなビジネスモデルや製品・サービスの開発にも積極的に活用されています。競合他社がベンチマークする存在となり、AI活用のベストプラクティスを業界に広める立場になっています。

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各レベルの比較

観点レベル1:認識段階レベル2:実験段階レベル3:採用段階レベル4:統合段階レベル5:最適化段階
AI活用の範囲個人レベル特定業務・チーム特定部門組織全体組織全体+外部連携
組織的取り組みなし・非公式小規模な試験的取り組み正式な推進体制全社的な推進体制戦略的・文化的統合
効果測定個人的な体感簡易的な効果測定体系的な効果測定包括的なROI分析戦略的価値評価
AIツール利用無料版・個人契約一部有料版試用部門契約・予算化全社契約・システム連携カスタム開発・戦略的投資
スキル・知識個人的な学習限定的な研修計画的な研修プログラム全社的な能力開発AI活用文化の醸成
リスク管理個人の裁量基本的なルール公式ガイドライン包括的なガバナンス戦略的リスク活用

自社の現在のレベルを診断するには

自社の現在のAI活用レベルを診断するために、以下の質問に答えてみましょう。最も多く当てはまるレベルが、現在の成熟度の目安となります。

組織の取り組み

  • AIの活用は個人的な試みにとどまっていますか?(レベル1)
  • 小規模なグループや特定のプロジェクトでAIを試験的に使用していますか?(レベル2)
  • 特定の部門でAIが正式な業務プロセスに組み込まれていますか?(レベル3)
  • 組織全体でAIの活用が進み、システム連携も行われていますか?(レベル4)
  • AIを活用した業務改善や価値創造が組織文化として定着していますか?(レベル5)

予算・リソース

  • AI活用に関する公式な予算はありませんか?(レベル1)
  • 試験的なプロジェクト用に限定的な予算がありますか?(レベル2)
  • 特定部門のAI活用に正式な予算が割り当てられていますか?(レベル3)
  • 全社的なAI活用計画に基づいた予算が確保されていますか?(レベル4)
  • AIへの投資が戦略的優先事項として確立されていますか?(レベル5)

人材・スキル

  • 一部の個人が自主的にAIスキルを学んでいる段階ですか?(レベル1)
  • 限られたメンバーに対する基本的なAI活用研修を行っていますか?(レベル2)
  • 計画的なAI活用研修プログラムが存在しますか?(レベル3)
  • 組織全体のAI活用能力開発の体系があり、専門人材も配置されていますか?(レベル4)
  • AIと人間の協働を前提としたスキル開発と組織文化が確立されていますか?(レベル5)

ガバナンス・リスク管理

  • AI利用に関する公式なルールやガイドラインはありませんか?(レベル1)
  • 基本的なAI利用ルールが策定され始めていますか?(レベル2)
  • 公式なAI活用ガイドラインが存在し、運用されていますか?(レベル3)
  • 包括的なAIガバナンス体制が確立されていますか?(レベル4)
  • リスク管理と価値創造のバランスを考慮した戦略的なAIガバナンスが機能していますか?(レベル5)

段階的な成長の重要性

AI活用の成熟度モデルに基づいて発展を目指す際、以下の点に留意することが重要です:

  1. 段階飛ばしのリスク: レベル1から一足飛びにレベル4や5を目指すことは通常困難であり、組織の混乱や失敗リスクを高めます。各段階での学びを積み重ねることが重要です。

  2. 部門間の差異: 同じ組織内でも、部門によって成熟度が異なるのは自然です。先行する部門の経験を活かし、段階的に広げていく戦略が効果的です。

  3. 基盤の重要性: 各レベルの取り組みは、次のレベルの基盤となります。例えば、レベル2での効果測定の仕組みがなければ、レベル3での正式導入の意思決定が難しくなります。

  4. 継続的な評価と調整: 成熟度の評価は一度きりではなく、定期的に行い、目標や取り組みを調整していくことが大切です。

次のレベルへ進むためには

現在の成熟度レベルが明確になったら、次のレベルへの移行を計画しましょう。段階別高度化ステップのセクションでは、各レベルから次のレベルへと進むための具体的なステップを解説しています。

次のページでは、各レベルの詳細について見ていきましょう。まずはレベル1:認識段階から解説します。