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レベル2:実験段階

AI活用の5段階成熟度モデルにおける2番目の段階、「実験段階」について解説します。

概要

レベル2:実験段階 (Experimentation) は、組織が生成AIの可能性を具体的に探り始める段階です。特定の部門やチーム、あるいは特定の業務プロセスにおいて、試験的にAIツールを導入し、その効果や課題を検証します。組織的な関心が高まり、小規模ながらも公式な取り組みが始まります。

特徴

  • AIへの理解度: 組織内で生成AIの基本的な機能や活用方法に関する理解が進み、具体的な業務への適用可能性が議論され始める。
  • 活用状況: 特定の部門やプロジェクトチームで、選定された業務(例:文書作成、データ分析支援、アイデア発想)において、試験的にAIツールが導入・活用される。利用はまだ限定的だが、体系的な試行が行われる。
  • 組織的取り組み: AI活用に関心を持つメンバーによる非公式なスタディグループや、部門レベルでの小規模な推進担当者が存在する。経営層がAI活用の実験を認知・承認している場合がある。
  • ツール利用: 無料版に加え、一部で有料版のAIツール(ChatGPT Plus, Claude Proなど)が試験的に導入される。利用目的や効果検証のためのアカウント管理が意識され始める。
  • スキルレベル: 推進担当者や実験プロジェクトのメンバーを中心に、プロンプト作成スキルやAIツールの実践的な活用スキルが向上し始める。他の従業員への知識移転はまだ限定的。
  • 効果測定: 時間削減、作業効率向上、品質改善などの観点から、簡易的な効果測定(例:導入前後の作業時間比較、アンケート調査)が試みられる。定量的なROI算出には至らない場合が多い。
  • リスク認識: セキュリティや情報管理に関する基本的なルールが議論され、実験範囲内での注意喚起が行われる。公式なガイドライン策定には至らないことが多い。

典型的な活動

  • 特定の業務課題解決のために、AI活用プロジェクトチームが発足する。
  • 業務別のプロンプトテンプレートが作成され、チーム内で共有・試用される。
  • 定型的な報告書作成やメール対応の一部にAI支援を導入し、効果を測定する。
  • 社内勉強会やワークショップが開催され、AIの基本的な使い方や活用事例が共有される。
  • 利用するAIツールの比較検討が行われる。

わかりやすい例

営業部で「提案書作成効率化プロジェクト」が発足。メンバー5名がChatGPT Plusを導入し、共通のプロンプトテンプレートを使って提案書の構成案や文章のドラフト作成を試行。毎週の定例会で、作成時間の変化、生成された内容の質、プロンプトの改善点などを共有し、3ヶ月後の効果測定レポートを作成することを目標としている。人事部でも同様に、求人票作成にAIを活用する実験が小規模に開始された。

この段階の課題

  • 実験的な取り組みがサイロ化し、組織全体への波及効果が限定的になる可能性がある。
  • 効果測定の方法が確立されておらず、投資対効果を客観的に示せない。
  • 成功事例やノウハウが特定のチームや個人に偏在し、組織知として蓄積されない。
  • 全社的なガイドラインがないため、セキュリティリスクや利用ルールのばらつきが生じる可能性がある。
  • 経営層の本格的なコミットメントや予算確保が難しい場合がある。

次のレベル(採用段階)への移行に必要なこと

レベル2からレベル3(採用段階)へ進むためには、以下の要素が重要になります。

  1. 効果の定量化とROI実証:

    • 実験結果をもとに、時間削減効果、コスト削減効果、品質向上効果などを具体的な数値で示し、投資対効果(ROI)を算出する。
    • 効果測定のプロセスを標準化する。
  2. 成功事例の横展開:

    • 実験で得られた成功事例、効果的なプロンプト、ノウハウなどを組織全体(特に他部門)に積極的に共有し、関心を高める。
  3. 経営層への報告と承認獲得:

    • 定量的な効果測定結果とROI分析をもとに、経営層にAI活用の有効性を報告し、本格導入に向けた承認と予算を獲得する。
  4. ガイドラインとガバナンスの基礎構築:

    • 全社的なAI活用ポリシーやセキュリティガイドラインの策定に着手する。
    • 利用ツールの標準化やアカウント管理の方針を検討する。
  5. 体系的なトレーニング計画:

    • 実験を通じて明らかになった必要なスキルに基づき、全社的なAI活用トレーニングプログラムの計画を立案する。

レベル3:採用段階へ進むためのステップを見る

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