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レベル3:採用段階

AI活用の5段階成熟度モデルにおける3番目の段階、「採用段階」について解説します。

概要

レベル3:採用段階 (Adoption) は、実験段階での効果検証を経て、生成AIの活用を特定の業務プロセスに正式に組み込む段階です。組織的な取り組みが本格化し、ガイドライン策定、体系的なトレーニング、効果測定の仕組みなどが整備され始めます。

特徴

  • AIへの理解度: AI活用のメリットとリスクが組織内で広く理解され、特定の業務における具体的な活用方法が定着し始める。
  • 活用状況: ROIが実証された特定の業務領域(例:営業資料作成、カスタマーサポートの一部、品質レポート作成など)において、AI活用が標準的な業務プロセスの一部として組み込まれる。利用が義務化または強く推奨される場合もある。
  • 組織的取り組み: AI活用を推進するための公式な体制(例:AI推進担当部署、タスクフォース)が設置され、活動が本格化する。AI活用が事業計画や部門目標に組み込まれ、関連予算が確保される。
  • ツール利用: 組織として特定のAIツール(有料のビジネスプランなど)が標準ツールとして採用され、ライセンス管理が行われる。セキュリティやコンプライアンス要件を満たすツールが選定される。
  • スキルレベル: 対象業務の担当者を中心に、体系的なトレーニングプログラムが提供され、AIを効果的に活用するためのスキルが標準化される。プロンプトエンジニアリングのベストプラクティスが共有される。
  • 効果測定: AI活用の効果(KPI達成度、ROIなど)を測定し、定期的にレポーティングする仕組みが確立・運用される。効果測定結果に基づいた改善活動が行われる。
  • リスク認識と管理: 全社的な「生成AI活用ポリシー」や「セキュリティガイドライン」が策定・導入され、従業員に周知される。利用状況のモニタリングや監査の仕組みが検討され始める。

典型的な活動

  • AI活用を前提とした業務フローの再設計と標準作業手順書(SOP)の改訂。
  • 全社または部門単位でのAI活用ガイドラインの策定と展開。
  • 対象従業員向けの体系的なAI活用トレーニング(基礎、応用、業務特化など)の実施。
  • 効果測定指標(KPI)の設定と、定期的な効果測定レポートの作成・報告。
  • AIツールのライセンス管理とコスト最適化。
  • 成功事例の積極的な社内広報とナレッジ共有。

わかりやすい例

社内公式の「生成AI活用ガイドライン」が策定され、営業部と企画部では業務プロセスに正式にAIが組み込まれた。営業部では、全営業担当者が会社契約のChatGPT Teamアカウントを利用し、標準化されたプロンプトテンプレートを用いて提案書の初稿を作成することが義務付けられている。企画部では、市場調査レポートの要約作成にClaudeが活用されている。人事部が主催するAI活用研修が定期的に開催され、効果測定レポートが四半期ごとに経営会議に報告されている。

この段階の課題

  • AI活用が特定の部門や業務に限定され、組織全体への展開が進まない可能性がある。
  • 既存システムとの連携が不十分で、データ入力や結果利用に手間がかかる場合がある。
  • AI活用スキルの個人差が拡大し、効果のばらつきが生じる可能性がある。
  • ガイドラインやポリシーが形骸化し、遵守されないケースが出てくる可能性がある。
  • 期待したほどのROIが達成できず、取り組みが停滞するリスクがある。

次のレベル(統合段階)への移行に必要なこと

レベル3からレベル4(統合段階)へ進むためには、以下の要素が重要になります。

  1. 部門横断的な展開と連携強化:

    • 成功事例を他部門へ積極的に横展開し、部門間の連携を促進する。
    • クロスファンクショナルなプロジェクトを立ち上げ、部門横断的な課題解決にAIを活用する。
  2. システム連携の推進:

    • 既存の業務システム(CRM, ERP, SFAなど)とAIツールをAPI連携させ、データの入出力やプロセスの自動化を進める。
  3. 高度な活用法の探求:

    • 単純なタスク代替だけでなく、分析、予測、最適化など、より高度なAI活用を試みる。
    • 特定の業務に特化したカスタムプロンプトやソリューションの開発を検討する。
  4. ナレッジマネジメントの体系化:

    • 効果的なプロンプト、活用ノウハウ、ベストプラクティスなどを組織全体で体系的に蓄積・共有・活用するための仕組み(ナレッジベース、CoPなど)を強化する。
  5. 全社的な推進体制の確立:

    • AI活用を全社的に推進・統括する専門組織(AI CoEなど)の設置や機能強化を検討する。
    • 経営戦略とAI活用戦略の連携を強化する。

レベル4:統合段階へ進むためのステップを見る

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