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レベル1:認識段階

AI活用の5段階成熟度モデルにおける最初の段階、「認識段階」について解説します。

概要

レベル1:認識段階 (Awareness) は、組織が生成AI技術の存在やその潜在的な可能性を認識し始めたばかりの初期段階です。この段階では、まだ組織的な取り組みは行われておらず、AI活用は一部の従業員の個人的な興味や実験にとどまっていることが多いです。

特徴

  • AIへの理解度: 生成AI(ChatGPTなど)の基本的な機能や用語(例:プロンプト)について、組織内での理解が限定的または断片的。
  • 活用状況: 一部の先進的な従業員が、個人的な興味から無料版のAIツールを試用している程度。業務への適用は散発的で、体系化されていない。
  • 組織的取り組み: AI活用に関する公式な方針、ガイドライン、予算、推進体制などが存在しない。経営層も関心はあるかもしれないが、具体的な指示や戦略はない。
  • ツール利用: 主に無料版の公開AIサービスが個人的に利用される。セキュリティや情報管理に関する懸念が十分に認識されていない場合がある。
  • スキルレベル: 組織全体としてはAI活用スキルが低い。一部の個人が独学で知識を習得している可能性がある。
  • 効果測定: AI活用の効果は測定されておらず、個人の主観的な感覚(「便利だ」「時間が短縮された気がする」など)にとどまる。
  • リスク認識: AI利用に伴うリスク(情報漏洩、著作権、誤情報など)に対する組織的な認識や対策が不足している。

典型的な活動

  • 従業員が個人的にChatGPTなどのAIツールを試してみる。
  • ニュース記事やセミナーで生成AIに関する情報を収集する。
  • 簡単なタスク(メールの下書き、アイデア出しなど)でAIを個人的に利用してみる。
  • 同僚間で非公式にAIツールの使い方や感想を共有する。

わかりやすい例

営業部の田中さんが、顧客への定型的なお礼メールを作成する際に、個人的に契約しているChatGPT Plusを使って下書きを作成してみた。作業時間が少し短縮されたように感じたが、その成果や方法をチームや上司に正式に報告・共有することはなかった。他の部署でも、同様に数人の従業員が個人的にAIを試しているが、組織全体としてはその実態を把握していない。

この段階の課題

  • AI活用の効果や可能性が組織全体に十分に認識されていない。
  • 個人的な活用にとどまり、組織的な知識やノウハウが蓄積されない。
  • セキュリティやコンプライアンスのリスクが管理されていない。
  • 本格的な導入に向けた方向性や戦略が定まらない。

次のレベル(実験段階)への移行に必要なこと

レベル1からレベル2(実験段階)へ進むためには、以下の要素が重要になります。

  1. 成功体験の創出と共有:

    • 個人的な活用であっても、具体的な成功事例(時間短縮、品質向上など)を記録し、組織内で共有する機会を作る。
    • 簡単で効果が出やすい業務を選び、小さな成功を積み重ねる。
  2. 組織的な関心の喚起:

    • 経営層や管理職に対し、AI活用の可能性と具体的なメリットを(たとえ小規模な事例でも)提示し、関心を高める。
    • 社内勉強会や情報共有セッションなどを企画し、AIに関する基本的な知識を広める。
  3. 推進者の特定:

    • AI活用に積極的な従業員を特定し、非公式でも良いので推進役としての活動を奨励する。
  4. リスクへの初期対応:

    • 最低限のセキュリティルール(例:機密情報を入力しない)を周知するなど、リスクに対する基本的な意識を高める。

レベル2:実験段階へ進むためのステップを見る

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