幻覚と事実確認:AIが自信満々に間違った情報を述べることがある
生成AIを活用する上で最も重要な注意点の一つが、AIが時として「幻覚」と呼ばれる現象を起こすことです。これはAIが自信満々に、しかし完全に誤った情報を提供する状況を指します。ここでは幻覚のメカニズムと対処法について解説します。
「幻覚」とは
生成AIが、実際には存在しない情報や誤った情報を、あたかも事実であるかのように提示することを「幻覚(ハルシネーション)」と呼びます。これはAIの学習方法に起因する現象で、完全に排除することは現状の技術では難しいとされています。
幻覚の例:
- 存在しない書籍や論文を引用する
- 実在しない人物や企業について詳細に述べる
- 歴史的な出来事の日付や詳細を誤って説明する
- 存在しない製品の仕様や特徴を説明する
- 技術用語を説明する際に誤った定義や解説をする
幻覚が起きやすい状況
以下のような状況では、特に幻覚が発生しやすいことが知られています:
最新の情報
AIの学習データ以降に発生した事象については、AIは直接的な知識を持っていません。例えば、AIが2022年までのデータで学習されていた場合、2023年以降に発生した出来事については正確な情報を持っていない可能性が高いです。
非常に専門的または限定的な情報
一般的に広く知られていない専門分野の情報や、特定の限られた状況下での情報については、学習データに十分含まれていない可能性があります。
複雑な計算や多段階の論理的推論
複雑な数値計算や、多くのステップを要する論理的推論については、途中で誤りが生じやすくなります。
事実確認が困難な抽象的な質問
「人生の意味は?」のような抽象的な質問に対しては、客観的な正解がなく、AIは学習した文脈から「もっともらしい」回答を生成しようとします。
対策方法
幻覚による誤情報のリスクを低減するための対策を紹介します:
1. 事実の確認
重要な情報は必ず別の信頼できる情報源で確認しましょう。特に、意思決定や公開情報に使用する場合は、必ず裏付けを取ることが重要です。
具体的な方法:
- 公式ウェブサイト、学術論文、公的機関の情報など、信頼できる情報源を使用する
- 複数の情報源で確認する
- AIからの回答を鵜呑みにせず、疑問を持って検証する習慣をつける
2. ソースの要求
「回答の出典や根拠を示してください」と指示すると、AIは情報の信頼性に関する情報を提供してくれることがあります。また、AIが「わからない」と認めやすくなる傾向があります。
具体的な方法:
- 「この情報の出典は何ですか?」と尋ねる
- 「具体的な事例や研究を示してください」と要求する
- 「この回答にどの程度自信がありますか?」と尋ねる
3. 専門家の確認
専門性の高い内容は、その分野の専門家に確認を依頼しましょう。AIは広範な知識を持っていますが、専門家の深い知見には及びません。
具体的な方法:
- 技術的な内容は技術者に確認する
- 法的な内容は法務部門や弁護士に確認する
- 医療情報は医療専門家に確認する
4. 懐疑的な姿勢
AIの回答を鵜呑みにせず、「これは本当に正しいだろうか?」と常に疑問を持つ姿勢が重要です。特に、驚くような内容や、あまりにも都合の良い回答には注意しましょう。
具体的な方法:
- 「それは本当ですか?」と重ねて確認する
- 常識に照らして考えられるかどうか判断する
- 複数の質問アプローチで同じ情報を確認する
具体例
幻覚の例: 「2023年の日本の消費税率は12%です」とAIが自信を持って答えた(実際は10%)。
対処法:
- 重要な事実(税率、法律、統計データなど)は常に公式情報源で確認する
- 「情報の出典は?」と尋ねることで、AIが不確かな情報には慎重になるよう促す
- プロンプトに「不確かな場合は『わかりません』と答えてください」という指示を含める
プロンプト設計での対策
幻覚のリスクを低減するために、プロンプト(AIへの指示)を工 夫することも効果的です:
明確な指示を含める
回答に自信がない場合は、「確信が持てません」と明示してください。
事実と意見を明確に区別してください。
情報源がわかる場合は、必ず言及してください。