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初めてのプロンプト作成:AIに上手に指示を出す方法

生成AIの能力を最大限に引き出すためには、効果的なプロンプト(AIへの指示)を作成することが鍵となります。このページでは、初心者でもすぐに実践できる効果的なプロンプト作成の方法を解説します。

プロンプト作成の基本原則

良いプロンプトは「明確さ」「具体性」「構造」の3つが重要です。AIは心を読むことができないので、求めるものを具体的に伝える必要があります。

良いプロンプトの特徴

  1. 明確な目的:何をしてほしいのかが明確
  2. 具体的な指示:抽象的ではなく、具体的な内容と条件
  3. 必要な情報の提供:AIが回答するために必要な背景や文脈
  4. 出力形式の指定:期待する回答の形式や長さ

基本的なプロンプトの構造

効果的なプロンプトの基本構造を紹介します。この構造は必ずしもすべて使う必要はありません。シンプルな質問なら「【タスク】」だけでも十分です。複雑な依頼ほど、詳細な指示が効果的です。

【役割】あなたは〇〇の専門家として回答してください。

【タスク】以下の〇〇について△△してください。

【背景情報】
・〇〇〇〇
・△△△△
・□□□□

【形式】以下の形式で回答してください:
1. 〇〇〇
2. △△△
3. □□□

【追加指示】
・〇〇〇〇
・△△△△

各要素の詳細

【役割】(オプション)

AIにどのような専門知識や視点で回答してほしいかを指定します。これにより、AIの回答スタイルや内容の専門性が変わります。

  • 「あなたはマーケティングの専門家として回答してください」
  • 「シニア財務アナリストとして分析してください」
  • 「初心者にもわかりやすく説明する科学教師の立場で解説してください」

【タスク】(必須)

AIに具体的に何をしてほしいのかを明記します。これがプロンプトの中心となる部分です。

  • 「以下の顧客レビューを肯定的・否定的・中立的に分類してください」
  • 「この製品説明文を300字程度に要約してください」
  • 「以下の問題点に対する3つの解決策を提案してください」

【背景情報】(状況に応じて)

AIが適切に回答するために必要な情報や文脈を提供します。長い情報は箇条書きにすると読みやすくなります。

【背景情報】
・当社は従業員50名のソフトウェア開発会社です
・主に金融機関向けのセキュリティソリューションを提供しています
・現在、リモートワーク環境でのチームコミュニケーション改善が課題です
・週1回のオンラインミーティングと毎日の非同期コミュニケーションを行っています

【形式】(状況に応じて)

回答をどのような形で提示してほしいかを指定します。構造化された回答が欲しい場合に特に有効です。

【形式】
・箇条書きでわかりやすく説明してください
・各ポイントには具体例を1つ含めてください
・最後に200字以内のまとめを追加してください

または

【形式】以下の構造で回答してください:
1. 概要(100字程度)
2. 主要な3つのポイント(各200字程度)
3. 実施ステップ(時系列で5つのステップ)
4. 考慮すべきリスク(3つ)
5. 次のアクション

【追加指示】(オプション)

特に考慮してほしい点や、避けてほしい点などの補足指示を記載します。

【追加指示】
・専門用語は避け、一般の人にもわかりやすい表現を使ってください
・具体的な数字や事例を含めると良いでしょう
・結論から先に述べ、その後に詳細な説明を加えてください

具体例:会議の議事録作成支援

以下は、会議の議事録作成を支援するためのプロンプトの例です。

あなたは経験豊富な議事録作成の専門家として回答してください。

以下の会議メモから、簡潔で明確な議事録を作成してください。

【会議情報】
・会議名:四半期営業戦略会議
・日時:2023年10月15日 14:00-16:00
・参加者:営業部門(田中、佐藤、山田)、マーケティング部門(鈴木、高橋)

【メモ内容】
田中から第3四半期の営業実績報告があった。目標の92%達成で、特に東日本エリアが好調。
佐藤からは大口顧客AとBの契約更新状況について報告。Aは更新確定、Bは価格交渉中。
マーケティングからは新キャンペーンの提案があり、11月開始で合意。予算は200万円で承認。
山田から新規顧客開拓の課題として、競合との差別化ポイントが弱いとの指摘。
改善策としてサービス特化型の提案資料を作成することに。担当は鈴木と山田。期限は10月末。
次回会議は11月5日に設定。

【形式】
1. 会議概要
2. 討議事項と決定事項(箇条書き)
3. アクションアイテム(担当者と期限を明記)
4. 次回会議予定

プロンプト作成のコツ(初心者向け)

1. ステップバイステップで始める

  • 最初は短く簡単な指示から始めましょう
  • 徐々に詳細さを増やしていきましょう
  • 同じ質問でも違う言い方で試してみましょう

2. 具体的な指示を心がける

漠然とした指示具体的な指示
「良いアイデアを出して」「20代女性向けの健康スイーツのアイデアを5つ提案して」
「詳しく説明して」「初心者にもわかるように、例を3つ入れて説明して」
「マーケティング戦略を立てて」「ECサイトの冬季セール(12月〜1月)向けのSNSマーケティング戦略を、予算10万円以内で立案して」

3. 出力形式を指定する

「箇条書きで」「表形式で」など、見やすい形式を指定すると使いやすい成果物が得られます。また、「500字以内で」など長さの指定も効果的です。

4. わからないことは素直に質問

最初の回答が理想と違っても諦めず、「もっと〇〇な内容にしてほしい」と追加指示を出しましょう。「別の例も見せて」「もっと詳しく説明して」など、会話を続けながら調整するのも効果的です。

初心者がよく陥るプロンプトの問題と改善例

例1:漠然とした指示

改善前:「営業資料を作って」

改善後:「IT業界の中小企業向けに、当社のクラウドサービスの利点を紹介する2ページの営業資料の構成と内容を提案してください。特に費用対効果とセキュリティ面を強調したいです。」

例2:情報不足

改善前:「この問題の解決策を教えて」

改善後:「従業員30名の小売店で、レジ待ち時間が長くなり顧客満足度が下がっています。予算は限られていますが、この問題の解決策を3つ提案してください。各案のメリット・デメリットも含めてください。」

例3:期待の不明確さ

改善前:「新商品のアイデアが欲しい」

改善後:「健康志向の40-50代女性向けの新しいヨーグルト商品のアイデアを5つ提案してください。各アイデアには、製品名、主な特徴、想定される価格帯、差別化ポイントを含めてください。」

段階的なプロンプトの改善例

効果的なプロンプトは一度で完成するとは限りません。以下は段階的に改善する例です:

初期プロンプト(基本的過ぎる)

営業報告書を書いてください。

結果:一般的な営業報告書の雛形が生成されるが、具体的な内容がなく汎用的すぎる。

改善版プロンプト(情報を追加)

以下の情報を基に、9月の営業報告書を作成してください。

・売上:8,750万円(目標8,000万円)
・新規顧客:12社獲得
・主要商品別売上:製品A 3,200万円、製品B 2,800万円、サービスC 2,750万円

結果:具体的な数字を含んだ報告書になるが、構成や重点が明確でない。

さらなる改善版(構成と目的を明確化)

以下の情報を基に、取締役向けの月次営業報告書を作成してください。

【基本情報】
・対象期間:2023年9月1日~9月30日
・部署:法人営業部 第一チーム
・担当地域:東京、神奈川、埼玉

【業績データ】
・売上目標:8,000万円
・実績:8,750万円(目標比109%)
・新規顧客獲得数:12社(目標10社)
・主要商品別売上:製品A 3,200万円、製品B 2,800万円、サービスC 2,750万円

【形式】
1. エグゼクティブサマリー(100字程度)
2. 業績ハイライト(箇条書き、5項目程度)
3. 詳細分析(商品別、地域別の傾向と考察)
4. 課題と次月の施策(3項目程度)

プロフェッショナルで簡潔な文体を使用し、データに基づく具体的な分析を含めてください。全体の長さは1ページ(400-500字程度)に収めてください。

結果:具体的な数値と状況に基づいた、目的に合った報告書が生成される。

業務別プロンプト作成のヒント

文書作成

  • 目的、対象読者、トーン、構成などを明確に指定する
  • 例文や参考にしたい文例があれば提示する
  • 文字数や形式の制約を明示する

分析・調査

  • 分析対象の情報を具体的に提供する
  • 分析の視点や切り口を指定する
  • 結論から知りたいのか、プロセスも含めて欲しいのかを明確にする

アイデア発想

  • 既存の制約条件や前提を明示する
  • 求めるアイデアの種類や性質を具体的に伝える
  • 評価基準や優先事項を伝える

問題解決

  • 問題の状況、影響、これまでの試みを詳細に説明する
  • 解決策に求める条件(予算、時間、人的リソースなど)を明示する
  • 複数の異なるアプローチを求めると良い

まとめ

効果的なプロンプト作成は、生成AIを活用するための最も重要なスキルの一つです。基本的な構造を理解し、具体的で明確な指示を出すことで、AIからより良い回答を得ることができます。最初は完璧を目指さず、対話を通じて徐々に改善していく姿勢が大切です。

プロンプトの作成は一種の「AIとのコミュニケーション技術」です。練習を重ねるほど上達し、より効果的なAI活用が可能になります。

次のページでは、AIの活用結果を評価し改善するサイクルについて解説します。